2024/03/20 18:55
少し前の記事「ノートとは?」で、ノートについて知っていると、香りを嗅がなくてもイメージできるようになる、という話をしました。
ですが、イメージの中でいい香りだなぁと感じても、それを言葉にして誰かに伝えるのは難しかったりします。
香りを直接表現する言葉はないため、あの香りがめっちゃ良いのに…モノがないからあの人には伝わらない!といった経験のある方もいるのではないでしょうか。
また、なんとなく欲しい香りがあるのに、結局上手く店員さんに伝えられず、端から順に1つずつ嗅いでみるしかない、なんてことになってしまう場合も。
そこで今回は、ETALEの調香師である私が香りを人に伝えるとき、何をどのように伝えるよう意識しているのか、ちょっとしたコツみたいなものをまとめてみました。
香りを上手に伝えたいときには、ぜひ参考にしてみてくださいねー!
できるだけイメージが共通になる言葉を選ぶ
まずは、香りを伝える際に常に気をつけたいことから。
できるだけ多くの人がイメージしやすい言葉を選ぶ。
これが一番大切です。
良くありがちな言葉として、柔らかくてまろやかな…、スパイシーな香りで…、エキゾチックな…などなど。
これで上手く伝わるでしょうか。
少なくともニュアンスは伝わりそうですね。
ですが、柔らかくてまろやかなと言われ、甘めの樹脂のような香りをイメージする人もいれば、乾いた木のような香りをイメージする人もいます。
エキゾチックも、南国のフルーツのような芳醇な香り、民族チックないわゆるオリエンタル調、香水らしいマリンノート…どれにあたるか混乱してしまいます。
香りの感じ方は人それぞれです。
したがって、意味の幅が広い言葉は相手に間違って伝わってしまうこともあるわけです。
もちろん、感じた雰囲気を伝えることは大切ですよね。
ですが、香りをどのように受け取るかは人それぞれだ、ということを覚えておきましょう。
そのうえで、できるだけ具体的な言葉を選んであげましょう。
できれば、桃みたいな…、乾いた木の香りで…、青々しい草の香りで…など、多くの人が共通イメージを持ちやすい言葉で表現できると伝わりやすいです。
【コツ1】困ったら味の言葉に頼ろう!
とは言ってもさ、そんな言葉そう簡単に出ないから困ってるんだよ!という方も少なくないはず。
そんなときのコツを1つ。
「味に例えたらどんな感じ?」と自分に質問してみてください。
実は、人間の味覚というのは、嗅覚と密接に関わっています。
その証拠に、鼻をつまんでご飯を食べると、甘い・辛い・苦いくらいしか感じられません。
つまり、皆さまが味覚だと感じている風味などは、実は嗅覚から得ている情報だったりします。
逆に、嗅覚で感じることは味覚に例えやすい、と言い換えることができますね。
さらに、香りを直接表現する言葉は無いのに対し、味覚で感じる味を共有する言葉は豊富にあります。
例えば、酸っぱい・爽やかに鼻に抜ける・もったりと甘い・みずみずしい、などなど。
一言で言えば、テレビでよく見る食レポのイメージですね。
言葉に詰まったら、「味に例えたら?」と覚えておいてください!
【コツ2】慣れてきたらノートに沿って
また、もう少し慣れてきたらノートも使いこなせるようになりたいところです。
ノートとは、「全体的な雰囲気はどんな感じか」と「どのタイミングでどんな香りがするか」をまとめた言葉です。
特に、フレグランス店の店員さんのように、香りの知識がある人と話すときはスムーズに伝わることが多いです。
ぜひ知っておいてほしい知識ですが、これは長くなってしまうので別の記事に詳しく書いています。
店員さんになるべく正確に伝えたい!という方は、ぜひ読んでみてくださいね!
【コツ3】魅力を引き出すのはオススメポイント
皆さまが暮らす街には、数え切れないほどの香りがあります。
そのため、この香りは初めての経験です!すごい!となることは正直少なく、差別化が難しいところ。
では、そんな中で自分の「推しフレグランス」の魅力を伝えるには、何を意識すればいいのでしょうか。
いつも私が気をつけてることは1つだけです。
それは、“ オススメポイント ” を一番先に伝えること。
好きな香りがあれば、どうしても端から端まで伝えたくなります。
ですが、全部伝えたところで、それこそありきたりなイメージに伝わってしまいがちです。
それよりかは、まず初めにオススメポイントを伝えることが大切。
そして、後から全体の雰囲気を添える、という説明が伝わりやすいと思います。
例えば…。
砂糖菓子みたいな美味しそうな甘さに、鼻にスーッと抜けるミントが混ざってるところがオススメ!
全体的に甘めの香りだけど、ミントがあるおかげで甘ったるくない。
そして、全体的には柑橘系と木の香りも合わさって、爽やかで優しい雰囲気の香り!
みたいな感じでしょうか。
少なくとも、甘い香りでミントや柑橘、木の香りも感じる、みたいに言われるよりは伝わりやすいですかね…。
ここでのオススメポイントは、「ミントがあるので甘ったるくない」ことです。
ちなみに、少し話は逸れますがノートを用いると…。
グルマン(甘いお菓子みたいな)ノートに、ミントの香りが鼻を抜けて調和することで、甘ったるくないのが特徴。
そして、トップノートではシトラス調、ベースノートではウッディ調の香りも調和して、全体的に優しい雰囲気を楽しめる。
みたいな感じになります。
少しだけ知的な感じが出ますね。
まとめ
今回は、私が香りを伝えるときに気をつけていることを簡単にまとめてみました!
言葉が出てこないという方は、イメージが共有しやすい味に例えてみる。
店員さんには、ノートを用いて話すと伝わりやすい。
より魅力的に感じてもらうには、オススメポイントを最初に伝える。
いかがだったでしょうか。
こんなことを言ってはいますが、実は私も意味の幅が広い言葉を思わず使ってしまうことが多々あります。
この伝え方というのは、思っているより難しいということですね…。
伝え方には特に決まりはないので、慣れてきたら色々試してみるといいと思います!
ただ、何に気をつけたらいいか分かんない!という方は、ひとまず今回の記事を参考にしてみてくださいね。
香りは言葉にするのがとても難しいもの。
一人でも多くの方にあなたの好きな香りが共有され、世の中にもっともっと良い香りが溢れていけばいいなと思います。